2005/9/22
■UCBの研究教育について
□LAPACKセミナー
前回報告したように、固有値計算で著名なProf.Beresford Neill
Parlettが名誉教授としてUCBの数学科にいます。彼は、授業の一環
として週に1度、内外から数値計算に関連するテーマを行っている
研究者を招待して、セミナー(LAPACKセミナー)を行っています。
UCBだから著名な研究者が集まってくることが原因かもしれません
が、この週1回の公開セミナーはとても有用です。内容は、数値解析、
数学史、数値計算アルゴリズム、数値計算ソフトウエアと広範な分野
に及びます。招待される人も、PD、訪問教授、UCBの修士学生、など
多彩です。
このセミナーのおかげで、学会に参加しなくても最新の研究成果を
知ることができます。
このようなセミナーが開催できるのは、彼のコーディネート能力に
依存していますが、一般に著名な名誉教授の先生は自分の専門分野の
研究状況に明るいので、このようなセミナーを開催できるものと推察
されます。
日本においても授業の活性化のため、名誉教授の先生がコーディネ
ートし、授業の一環として開催するセミナーがあってもいいような気
がします。
□TAのお仕事
日本でも近年、ティーチング・アシスタント(TA)制度が導入され、
多くの大学院生が教官の授業の補助を給与を貰って行っています。
当然UCBもTAの制度があります。しかし、こちらのTAは日本のTAと比
べて、重い職務の役職と思われます。
日本のTAの職務は、授業をもつ担当教員の采配に大きく依存すると
思いますが、一般的に計算機実習の補助やテストの採点などの補助作
業が主体だとおもいます。
ところがUCBのTAは、教授の授業の補助として、大学院生に授業を
行います。当然、教授もちゃんとした講義を授業中おこないますが、
それで不足する補助知識の講義や、教授の講義で理解的なかった事
項の質問の回答をTAが行います。
したがって米国のTAは、TAをすることで授業を行う経験を積むこ
とができます。このTAという職務は、履歴書にも記載できるちゃん
とした職業のようです。
1つの講義に、2名程度のTAが割り当てられています。補助的な
講義が、いすと黒板のあるロビー(ラウンジ)などで行われていま
す。
電通大全体のTAの活動内容を調査したわけではありませんが、
UCBのTAの活動形態は、教育活動として、とても洗練されたものに
見えます。この点において、米国のトップユニバーシティーの教育
レベルの高さを垣間見た気がします。
□授業の評価
教授が行う授業の評価を、日本の大学はどのようにおこなってい
るのでしょうか。おそらく、<大学側が>学生に調査(アンケート)
を行い、その結果を集計して公表しているものと思います。
では、米国ではどうなっているのでしょうか。結論として、<学生
の団体>がこれを行っています。すなわち、講義を受ける学生で組織
された団体が各教授の授業評価を行い、その結果をWWWで公開していま
す。
以下のページを見てください。これは、Eta Kappa Nuという団体の
ものですが、UCBのCSの教授の授業内容の評価が、レーティングととも
に出ています。
http://hkn.eecs.berkeley.edu/student/CourseSurvey/instructors/CS/Professor/?recent=1
このような学生による評価は、UCBに限らず全米の大学すべてでおこ
なわれているそうです。教員も、この評価を考慮した上で、講義内容の
改善がおこなわているそうです。
あるTAに聞いたところによると、場合によっては学科長も参考にする
とのことです。つまりこの評価があまりに悪いと、その内容を考慮した
上で、その教授に当面は講義をさせないという措置もとられることがあ
るようです。
日本の大学でも、私立大学は学生の評価を参考にしている大学があると
聞きました。この大学での教員側の学生評価の反論としては、学生に迎合
するといい講義が行えないとか、講義のレベルが下がるということを主張
している方もいました。ですが、やはり学生はよくも悪くも「お客様」
であるので、まったく意見が無視されるようなことがあったてはだめだと
思います。
UCBの場合、学生は講義の内容が高いからレベルを下げろといっているわ
けでなく、教員がちゃんと高度な話題を<わかりやすく>提供しているか、
という点で評価しているようです。
一方、このような学生の団体の幹部は、相当な権力を持ちます。このよ
うな学生は、米国社会においては、履歴書にかけるような職務であるとみな
されており、高く評価されるようです。
日本においてはどうでしょうか。おそらく文化的な点において、このよう
な学生の団体を大学側が対等にあつかうのは難しい気がします。
しかし講義において、教員と学生がよい緊張関係を保つため、このような
学生による評価機構は必要ではないか、と思います。
■米国の生活について
□カープールレーン
米国には、フリーウエーにカープールレーンと呼ばれる特別なレーンがあり
ます。このレーンは、道路によって異なりますが、2名や3名以上載っている
車がのみ走ることが許されます。この制限は、標識に書いてあります。
仮にカープールレーンを1名で走っていて、警察に捕まると、5万円程度の
罰金チケットを切られるそうです。
面白いことに、加州ではこのカープールレーンを1名乗車でも走れる車があ
ります。それは、トヨタのプリウスです。
この法案を通したのは、加州の知事のアーノルド・シュワルツェネッガーだ
そうです。理由は、環境にやさしい車だからだそうです。
□NP予約駐車スペース
UCBの中には、NPの方だけ優先して車を止めれるスペース(看板)があります。
数えた限りでは、3台ぐらい停めれるスペースがありました。
で、NPはなにかというと、ノーベル賞を取った人、とのことです。現在、ノー
ベル賞受賞者が何人UCBにいるかわかりませんが、このあたりのユーモア感覚には
脱帽します。
□米国の国立公園
今月は遠方に旅行し、ヨセミテ国立公園、グランドキャニオン国立公園を訪問し
ました。ヨセミテには2000m級の一枚岩の山があり、グランドキャニオンは
2000m級の谷があります。どちらも荘厳な風景に圧倒されます。
米国の国立公園はとても整備されています。入り口では、1台の乗用車あたり
$20ほどの入園料をとられますが、きれいなパンフレットをもらえます。
公園内では、レンジャーとよばれる自然環境や訪問者の安全を守る警察のような
人が常駐しています。看板やキャンプ場も、いたるところで整備されています。
荘厳な風景もさることながら、管理も徹底されている米国の国立公園は米国が誇
る自然遺産でしょう。