2005/11/16

■UCBの研究教育について

 □米国における大学教員の公募

 日本でも大学教員になるためには、公募と招聘の2種の形式があることが
知られています。米国も私の知る限り、この2種の形式により決まるようです。

 ●公募

 公募に関して、Demmel教授は各大学の教授などから、決めうちで情報を送ら
れてくるとか、限定メンバによる公募情報メーリングリストに入っているようで、
定期的(月に1度)に、数学と計算機科学に関するポストの公募情報を、BeBOPやLAPACK
のメーリングリストに流しています。

This month's issue of AcademicKeys' e-Flier for Mathematics
 and Computer Sciences, features 33 faculty openings, 17 senior
 administrative positions, and 12 Post-doc opportunities and links
 to hundreds more positions in higher education.

 以上から、今月はこの分野で、Facutlyポストが33、Senior Administrativeポストが17、
ポスドクが12、公募があるようです。

 ここで面白いのは、Senior Adminstrative Position の公募もある点です。つまり、
学長や学科長(President や Dean)まで公募します。これは、 日本の大学の制度と
大きく異なる点ですね。

 Academic Positionの公募では、Assistant Professorとか、Faculty Positionという
題目で公募しています。公募に必要な書類は、履歴書、所信表明書、参照できる方3名の
連絡先か推薦書、の場合が多いようです。これは、日本の大学教員の公募の場合と、殆ど
変わらないようです。

 また、ポスドクの公募も(日本と比較して)相当数あります。


 ●招聘

 招聘のケースは情報がほとんどないので一般論はいえませんが、Demmel宛に
来たメールを、彼がメーリングリストに流したものから判断すると、以下のようで
す。

 埋めたいポストに対する、きわめて専門分野が合致した当該大学の教授が、招聘
委員会の委員となるようです。その委員の教授は独自に候補者を探すようですが、
当該分野で権威のある他大学の教授に推薦者を募るようです。推薦者は、たとえば
周りにいるポスドクなどの人のようです。

 興味がある場合、推薦者の教授を通じて、招聘委員会の担当教授と電話などで可
能性の打ち合わせをするようです。以降はまったくの推察ですが、その後、脈があ
れば講演などをその大学で行い、最終的に招聘委員会で採用を採用を決めるという
手順になっているのではないでしょうか。


 □研究員の訪問状況

 Demmel教授は数値計算分野で著名なので、1-2ヶ月に1名程度、なんらかの訪
問者が研究室に来ます。来る人のポジションは、教授や研究員、ポスドクなどさま
ざまです。教授のポジションの人が多いようです。滞在期間は1週間程度が多いよ
うです。サバティカルで来る人もいます。私の場合も、米国と制度は完全に違うに
せよ、サバティカルの長期滞在とみなされています。
 
 Demmel教授は、訪問者のネットワーク環境や居場所などの世話と、適するテーマ
をテキパキと提供していました。このことから、当初思っていたより世話好きな人
のようです。

 □米国での発表スタイルと米国の学生の根拠のない自信について

 ●米国での発表スタイル

 週に2日ミーティングに参加し、週に1日セミナーに参加してきた結論として、
米国での発表スタイルは、「わかりやすい」ことを「わかりやすく」説明するこ
とだ、という当然の結論に至りました。

 きわめて当然の指摘だとおもいます。しかし驚くべきことに、日本の数理系コ
ミュニティでは、これは守られていません。つまり、複雑な数式をわかりにくく
提示し、分野外の人が理解できない専門用語(ジャルゴン)多用し、難解な説明
をする、という発表を多く見かけます。米国では、たとえ数値解析などの数理系
の発表でも、これはありません。

 ただ日本でも、本当にこのような難解な発表が数理系のコミュニティで評価さ
れているかどうかは不明です。

 日本では、権威ある先生がトリビアルな質問をすることは殆ど無いと思います。
米国では、相当の権威のある大先生でも、トリビアルな質問や、表記法の確認、
自分の理解の確認、を頻繁に行います。これは、発表者の意図を正確に捉えるため
に行っているようです。

 研究ミーティングでは、学生はしっかりした紙の資料を作ってくることは殆どあ
りません。しかし、やっている内容をわかりやすく伝える努力をします。つまり、
パワーポイントを用いた図、ホワイト・ボートを使った手書きの図、動画ツール、
などを駆使して口頭で説明します。教授も、納得するまで容赦なく議論します。

 ●米国の学生の自信

 米国の学生(UCBの学生)はセミナーなどで、客観的にみると進展が無いような
成果でも、わかりやすく、堂々と、発表をします。これは、かなりの驚きです。 
おそらく、日本の学生(東大などの)では、進展の無い成果を、わかりやすく、
かつ堂々と発表することは無いと思います。この差はどこから来るのでしょうか?

 青色ダイオードの中村教授による、以下のような講演を思い出しました。

 「米国の大学生は自信満々であり、日本の学生は自信が無い。だから、研究テーマ
に関して、日本の学生は、挑戦的なものを選ばない傾向がある。この違いはどこから
来るのか?・・・それは、日本の大学の入試問題が難解であるからだ。難解な入試問
題を若いうちから解かされており、解けないことがわかってしまう。つまり、自分の
限界を若いうちに悟ってしまう。」

 まさに、この指摘道理の事象を見てきました。

 逆に言うと、よい研究者になるには、少々頭が悪いほうがいいかもしれません。
つまり、自分の限界が理解できないという頭の悪さが必要かと・・・


■米国の生活について

 □Halloween
 
 日本でも、Halloweenはだんだん有名な祭日になってきています。ですが、米国では
もっと盛大に行われています。ちなみに、この日は休日ではありません。

 Halloweenでは、子供や大人が、Witchなどの怖い衣装を着る、というのが当初思ってい
たことです。しかし、怖い衣装にこだわる必要はないようです。たとえば、シンデレラなど
のかわいい衣装や、バットマンやスーパーマンなどのテレビキャラクターに変装する子も
多いです。つまり、衣装については何でもありです。

 注釈:
  子供番組のキャラクターで米国で有名なのは、セサミ・ストリートのエルモ、
  ドーラ・ザ・エクスプローラのド-ラ、スポンジ・ボブ・スクエア・パンツの
  スポンジ・ボブなのです。エルモ以外のキャラクターは日本でなじみがなく、
  当初は「何これ」と思っていたのですが、慣れてくるとだんだん面白くなって
  きます。

  小学生ぐらいの男の子には、日本の遊戯王(Uhgi-Oh)の遊戯が大人気です。
  英語版の番組も毎日放送されています。当然、カードも大流行です。日本の
  アニメ強し(ゲームか?)、というところです。

 パーティグッズの店や、スーパーなどでは、衣装が安売りしています。とりあえず、
古典的なWitchの衣装を子供用に購入しました。

 夜になると、普通の家の玄関の前に、かぼちゃをくりぬいてお化けの顔が作ってあ
るランタン(Jack-O-lantern)が出ています。この家に、悪戯か施しか(Trick-or-treat)
といって訪問すると、お菓子をもらえます。Halloweenの前後では、Welcome Trick-or-treaters
という張り紙が出ている店に行くと、商品の飴や菓子をもらえます。

 私は大学に出勤していたのですが、妻と娘が山の上の高級住宅街を中心に遅くまで家を回って、
相当数のお菓子を貰ってきました。米国に来て、面白いと思った行事のひとつです。